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2014.02.14 - web sportiva - 羽生結弦、SP首位発進!男子フィギュア優勝争いの行方は?(折山淑美)

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi photo by Noto Sunao/JMPA

 地元ロシアの観客が期待していたエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の欠場で、空席も少し目立った2月13日のフィギュアスケート男子ショートプ ログラム(SP)。選手が演技を始める前に、なぜか「ロシア!」という掛け声が掛かって少し笑い声もおこるどこか不思議な空気が漂っていた。それをキリッ と引き締めたのが、19番滑走の羽生結弦だった。

 メリハリのある滑り出しで観客席のざわめきを静めると、最初の4回転トーループを GOE(技の出来ばえ)の加点で2・86点をもらうほど完璧に決めた。その瞬間に客席からは「ウォーッ!」という歓声があがり、その後は観客の心をすべて 引き込むような完璧な演技。団体戦で「完全に手中にした」と感じさせたプログラムをさらに進化させ、101・45という史上最高得点を叩き出した。

http://i.imgur.com/d33DJlf.jpg

史上最高得点でSP首位に立った羽生結弦

「100点超えという得点を出せたのは本当に嬉しかったし、しかも、それを五輪という大舞台でできたことに喜びを感じました」

 こう話す羽生は、演技前には団体戦の時以上に緊張して脚が震えていたという。だがその緊張感をうまく集中力に変えられたことが、完璧な演技につながったのだろう。それもまた、彼が持っている強さのひとつといえる。

その後、21番滑走のパトリック・チャン(カナダ)は、完璧な状態ではないように見えたものの、最初の4回転トーループと3回転トーループのコンビ ネーションジャンプを決めるなど、3年連続世界王者の貫祿を見せた。トリプルアクセルの着氷でステップアウトするミスはあったものの、その後の要素で建て 直し、97・52点で羽生に続く2位となった。

「トリプルアクセルも団体戦の時より良かったが、もう少し軸を真っ直ぐにして大きなランディングをしたかった。でも、それ以外は良かったし、楽しんでパフォーマンスをすることができた」と、チャンは余裕を見せる。

 一方、他のメダル候補選手たちは、揃ってミスを犯してしまうSPとなった。

  ハビエル・フェルナンデス(スペイン)は順位こそ3位につけたが、最初の4回転サルコウと後半の連続ジャンプでミスをして86・98点止まり。昨年の世界 選手権2位のデニス・テン(カザフスタン)は最初の4回転トーループで転倒し、84・06点で9位。サルコウとトーループ2種類の4回転ジャンプをプログ ラムに入れていたケビン・レイノルズ(カナダ)に至っては、サルコウとトリプルアクセルで転倒して17位に沈む結果になってしまった。

 一方、期待の日本勢はやや明暗が分かれてしまったといえる。

「自分らしい演技ができなかった」と反省する髙橋大輔は、4回転トーループが回転不足でダウングレードになるも、他の要素で高く評価され86・40点を獲得。「終わった時は最終グループに入れると思わなかった」と苦笑いを浮かべるが、4位とまずまずの位置につけた。

 それに対して、最終滑走者だった町田樹は、4回転と3回転の連続ジャンプを含む前半はほぼ完璧だったが、終盤の3回転ルッツが2回転になってしまい、審判全員がGOEはマイナス3点をつけるほどのミス。結局83・48点で11位スタートになってしまった。

  結局、羽生とチャンのふたりが優勝争いへ一歩抜け出す形になった。3位のフェルナンデス以下は、上位ふたりには水をあけられたが、86点台が4人で85点 台がふたり。そして84点台、83点台と続き、3位フェルナンデスから11位の町田までは3・50点差。上位ふたりの金メダル争いと、9人による銅メダル 争いに二分される状況になった。

 優勝争いを考えると、羽生の方がジャンプの安定度が高く、SPの演技構成点ではチャンが羽生を上回ったが、その差はわずか0・57点。フリーで互いが完璧に演技をこなせば、僅差で羽生が上回る可能性が高いといえる。

SP後の記者会見で、チャンは「五輪のメダルはまだ獲ったことがないし、表彰台に立つのは大事なことだと思う。だが明日はそんなことを考えずに、自 分のプログラムを楽しもうという気持ちになっている」と話した。それがこれまで世界選手権を3連覇して得た勝ち方のコツなのか、あるいは、羽生の調子の良 さを意識しないようにするためのものなのか。

 一方、銅メダル争いは熾烈だ。技術基礎点は9人ともほぼ同じで、全員が完璧な演技をした場 合、最後は演技構成点の差で勝負が決まるはずだ。そうなったとき、わずかに有利なのは、ファイブコンポーネンツで9点台を出せる髙橋となる。そして、それ に続くのが、SPのファイブコンポーネンツで8点台後半を並べていたフェルナンデスやデニス・テンということになるだろう。

 まずは4回転を成功させることが必須で、そのうえで、いかにミスをしないでプログラムをまとめられるか。そして、五輪というプレッシャーが大きな舞台だからこそ、それに打ち勝った選手に凱歌があがることになりそうだ。

 

sportiva.shueisha.co.jp