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2014.12.11 - web sportiva - 常にアグレッシブ。挑戦者であり続ける羽生結弦選手 (竹内由恵)

14-15 赛季 web sportiva 2014 GPF

スペインのバルセロナで12月12日(日本時間)から開催されるフィギュアスケートグランプリファイナル。テレビ朝日では、12日夜8時から女子ショート プログラム(SP)、13日夜6時56分から男子SP、14日午後5時40分から男女フリー、夜11時30分からエキシビションを放送します。私は松岡修 造さん、織田信成さんとともに現地のスタジオを担当する予定です。

日本人選手は、女子は本郷理華選手、男子は町田樹選手と無良崇人選手、羽生結弦選手が出場し、全員の活躍に期待が集まっています。なかでも注目は、やはり羽生結弦選手。

 私が最初に羽生選手を取材したのは、2011年、上海で開催されたグランプリシリーズ中国大会でした。そのときから今に至るまで、羽生選手の印象は「とてもアグレッシブなアスリート」というものです。

 2011年の中国大会で、羽生選手が公式練習でも6分間練習でも最初から最後まで全力で滑って全力でジャンプを跳んでいたのが印象的で、「本番に体力を残しておけるのかな……」と思ったほど。

  また、羽生選手はその頃、アイスショーでステファン・ランビエール選手(スイス/2006年トリノ五輪銀メダル。2005、2006年世界選手権金メダ ル)と一緒になった時、「うまくなるためには行動しなければいけない」という一心で、当時はまだあまり話せなかった英語で「クワドラプル・ジャンプ、アド バイス、プリーズ!(4回転ジャンプのアドバイスお願いします!)」と声をかけたそうです。

 ランビエール選手はアドバイスを求めてくれた ことをものすごく喜んでくれたといい、羽生選手に身ぶり手振りをまじえてコーチをしてくれたそうです。4回転トーループは「右の股関節に力を入れて、体の 右側に軸をつくることと、跳ぶ前に少し間をとることが必要」と教えてもらったことを、羽生選手は嬉しそうに語ってくれました。

 また、当時まだ16歳だった羽生選手の受け答えが、その頃からとてもしっかりしていて驚かされるとともに、こう語っていたことをよく覚えています。

「東日本大震災で被災したみなさんのために、自分にできることは何かということをずっと考えている」

仙台で生まれ育った羽生選手は、2011年3月の東日本大震災直後は呆然とした気持ちになり、「もうスケートを辞めるしかないかな……」と考えてい たといいます。それでも、仙台市内を歩いていた時たくさんの人から「頑張ってください。スケートを続けてくださいね」と声をかけてもらい、そのことが「自 分がスケートをやることで、元気づけられる人がいるのかもしれない」と、競技を続ける決意をするきっかけになったのです。

「僕自身、被災者 という立場でありながら、スケートを続けさせてもらえているのは、多くの人の支えがあってのこと。10年後の自分はたぶんプロスケーターとして活動してい るだろうから、その時は色々な形で恩返しをしたいです」と、将来のことも語ってくれた羽生選手。「ソチ五輪で金メダルを獲ることが目標」であると同時に 「そこは終わりではなく出発点だと思っている」とも話していました。

 そんなふうに16歳のころから自分の将来の目標を明確に考えていた羽生選手ですから、今年の中国大会でアクシデントに見舞われながらもフリーを滑りきったことは、「立ち止まるわけにはいかない」という強い気持ちの表れだったのではないかと思います。

 

あの時、私は会場の特設スタジオで生中継の真っ最中でした。両選手のスピードがかなり出ていたため、「ドン」と音が響いたほどの激突で、最初は誰と誰がぶ つかったのか分からなかったのですが、リンクで滑っている他の選手を確認しながら、倒れているふたりの選手を見ると、羽生選手とエン・カン選手(中国)で した――。

そのアクシデントにも驚きましたが、羽生選手とエン・カン選手がメディカルチェックを受けてから、ふたりともリンクに上がって演技をしたことには、さらに驚かされました。

 松岡修造さんは「出るべきではない」とおっしゃっていましたし、大会後には、ロシアのプルシェンコ選手を筆頭にスケーターやアスリートの方々から「出場するべきではなかった」という発言もありました。

 私もその時「無理をして出場せずに安静にしたほうがいいのでは……」と思いました。次の2018年平昌(ピョンチャン)五輪を目標にするうえで、長いスパンで考えて、ケガの治療を優先してほしい、とも思っていました。

  そんななか、フリーの4分半を滑りきった羽生選手について「すごいな」とあらためて思ったのは、あの状況でも周りに気配りをしていたことです。ぶつかった エン・カン選手のことを心配して、リンクから上がったときに様子を見に行き、声をかけていたのです。また、車椅子でホテルに帰る時も、待機していた私たち メディアのスタッフに「ご迷惑をおかけしてしまってすみません」としっかりと挨拶をして会場をあとにしました。

 それだけ周囲に気を遣う羽生選手ですから、グランプリファイナルにソチ五輪メダリストがひとりも出ない状況にしてはいけないという責任感もあったのではないかと思います。

※男子銀メダルのパトリック・チャンは今季休養、銅メダルのデニス・テンは出場を逃した。女子金メダルのソトニコワはケガで今季欠場、銀メダルのキム・ヨナは引退。銅メダルのコストナーは今季休養。

また、フリーの『オペラ座の怪人』は「中学の時から好きな曲。やっとこの曲で演技できる」という思いもあり、中国大会直前の会見で「初めてプログラムを披露する緊張感もありますけど、それ以上に楽しみの方が大きい」と、試合が待ち遠しい様子でした。 ただ、今シーズンはまだ完璧な状態で演技を披露できていないこともあって、羽生選手自身「早くいい演技を見せたい」という思いもあるはずです。グ ランプリファイナルにどんな演技構成で臨むのかまだはっきりしていませんが、ブライアン・オーサーコーチは11月の日本大会の後、かなりハードな練習メ ニューを組んだそうなので、羽生選手がどこまでコンディションを上げてきたのか楽しみです。

 昨シーズン、福岡でのグランプリファイナルで優勝を飾った羽生選手ですが、バルセロナで開催される今回は、出場する6人中最下位での出場になります。そのことについて羽生選手は、「いちばん下から頂点を狙います」と力強く宣言していました。

 バルセロナで羽生選手の明るい笑顔が見られることと、日本人選手の活躍を願って、現地取材に行ってきます!

sportiva.shueisha.co.jp