2015.11.29 - FS 新世界纪录 part 2

羽生 新時代作った史上初300点超え!無敵の安倍晴明見せた

http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2015/11/29/kiji/K20151129011595420.html

最強のプリンスが金字塔を打ち立てた。14年ソチ五輪男子金メダリストの羽生結弦(ゆづる、20=ANA)が前日(27日)のSPに続き、フリーでも完璧 な演技を披露して216・07点の世界最高得点をマーク。合計は史上初めて300点を超える322・40点で2位の金博洋(18=中国)に55・97点差 をつけてGP通算5勝目を挙げた。スーパー世界新でファイナル(12月10日開幕、スペイン・バルセロナ)進出を決め、男子初の3連覇に挑む。
フィ ニッシュの前から、もう笑みが浮かんでいた。完璧な4分30秒を終えた羽生が、右手を突き上げ、そして勢いよく振り下ろす。リンクから引き揚げる際には、 右人さし指を立てて猛アピールだ。会場全体が沸く中、示されたスコアは史上初めて合計300点を超える322・40点。最強のプリンスが、男子フィギュア 新時代の到来を告げた。
「正直、興奮していてなんて言ったらいいか分かりません。ただ…、正直にうれしい。皆さんも凄く点数に驚かれたと思うし、自分も驚いている」
冒 頭に4回転サルコー、続いて4回転トーループに成功。基礎点が1・1倍になる演技後半にはトーループの4―2回転を予定していたが、4―3回転と難度を アップ。最後の3回転ルッツを降りると早くもガッツポーズだ。技術点は出来栄え評価で23・08点も加点。演技点の「音楽の解釈」の項目は、ジャッジ9人 中6人が10点満点をつけて9・89点。映画「陰陽師」に乗ったフリー。平安時代にタイムスリップした氷上には、無敵の安倍晴明がいた。
「まだ演技が良かった実感が湧いていない。フワフワした感じ。一つ一つ自分の気持ちを込めて、自分の体を信じて演技した」
過去を現在に生かす。14年ソチ五輪は金メダルを獲得したものの、戴冠を意識してフリーでミスが出た。この日も演技前にフリー200点、合計300点超えが頭をよぎったが、夢舞台を思い出して冷静に。「プレッシャーを自分で認められた。コントロールできた」。昨季の中国杯の激突事故で自分を責めた羽生は以降、他のスケーターに、これまでよりも注意を払い、元気にリンクに立てるありがたみも実感。死すら覚悟した経験も、今に生きている。
ソチ後、ライバルから追われる立場になった。黄金に彩られた戦績から錯覚することもあるが、羽生は来月7日で21歳になる若者だ。「僕、年寄り扱いされていますけど、まだ20歳なんですよ」。17歳の宇野昌磨、中国の18歳・金博洋ら年下の台頭にも、「先輩だからとかいう気持ちはないし、勝ってやろうと思っている」と言う。中性的なルックスに宿す闘争心が、進化を支えている。
12月のファイナルでは男子史上初の3連覇を狙う。「まだこれが(18年)平昌五輪でもないし、引退の試合でもない。これからもっともっと頑張って、点数じゃなくて、いい演技、皆さんの心に残る演技を目指していきます」。まだ満足感には 浸らない。自分を超えるための闘いが今、始まった。 [ 2015年11月29日 05:30 ]

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絶対王者だ!羽生、人類初322.40点でV「いまだ信じられない」/フィギュア

http://www.sanspo.com/sports/news/20151129/fgr15112905050001-n1.html

NHK杯第2日(28日、長野市ビッグハット)前人未到のハイスコアだ! 男子フリーでソチ五輪金メダルの羽生結弦(20)=ANA=が、3度の4回転ジャンプを成功させ、前日のショートプログラム(SP)に続く世界歴代最高得点の216・07点をマーク。世界初の300点超えとなる合計322・40点で優勝を飾った。GP通算5勝目(ファイナルを含む)を挙げ、史上初の3連覇を狙うGPファイナル(12月、バルセロナ)進出を決めた。
銀盤に伝説が刻まれた。圧巻の279秒を演じきった羽生は右腕を突き上げ、思いきり振り下ろした。興奮が収まらないまま『キス・アンド・クライ』へ。悲鳴にも似た黄色い歓声に胸に手を当てて応えると、場内にアナウンスされた驚異のスコアを耳にし、手で口を覆った。
「いまだに信じられない。ここまで本当に血のにじむような辛い練習をしてきた。スコアはビックリしたけど、やってやるとは思っていた」
完ぺきな舞いだった。冒頭の4回転サルコー、続く4回転トーループを難なく成功させた。基礎点が1・1倍になる演技後半に予定した4回転-2回転の連続トーループは、2つ目のジャンプを3回転に変更。「自分自身に『絶対王者だぞ』と言い聞かせながらやった」と自信満々に3回転ルッツを跳び終えると、残りの1分間は会場の拍手が鳴り止まなかった。
2013年フランス杯でパトリック・チャン(カナダ)が記録した196・75点を19・32点上回り、合計得点でもチャンの295・27点を27・13点塗り替えた。史上初めてSPで100点、フリーで200点、計300点のさらに上をいく驚天動地の結果だった。
『SEIMEI』は自身初となる和のプログラムだ。01年に公開された映画『陰陽師』で主演を務め、安倍晴明を演じた狂言師の野村萬斎(49)と8月に東京都内で対談。緊張と暑さで汗が噴き出る中、「フィギュアスケーターとして、狂言をどう演じればいいか」とたずねた。
3歳で初舞台を踏み、伝統芸能の道を究めてきた野村から、「アーティストという立場ではアスリートも狂言師も同じ。ジャンプ、スピン、ステップの一つ一つに意味を持たせることが大切」と説かれた。表現力を示す演技点は、曲の解釈9・89点を筆頭に5項目すべてで9点台。金言をそのまま実行に移した。
「これが平昌五輪でもないし、引退の試合でもない。さらにがんばって、みなさんの心に残る演技ができるように努力する」
史上初のV3がかかるGPファイナルの切符も文句なしで手にした。4回転ループも習得間近でクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)への挑戦も視野に入れる。まだまだ伸びしろのある絶対王者に世界がくぎ付けとなる。 (江坂勇始)
★観客は酸欠状態!?
歴史的瞬間を目撃したファンは、絶叫に次ぐ絶叫で、会場は異様な雰囲気に包まれた。表彰式後の羽生は、ソチ五輪シーズンのSPでも演じたパリの散歩道での名ポーズを氷上で決めるなど、ノリノリ。それを見たファンが再び絶叫するなど、会場のボルテージは最高潮に達した。町村香さん(31)=東京・港区、主婦=は「声を出しすぎて苦しい。長野に来て本当によかった」と感無量の様子だった。
★グッズも300点超え
会場内には、羽生が2012年5月にカナダ・トロントへ練習拠点を移すまで通っていた「アイスリンク仙台」のグッズ売り場もあった。同リンクは、シーズンごとに本人へ新調した手袋を渡しているが、本人が練習の際に愛用している今シーズンの手袋(税込800円)が飛ぶように売れた。27日の入荷分はすぐに売り切れた。また、来年のカレンダー(同2480円)の脇には、羽生直筆のサインも展示され、ファンが足を止めて見入っていた。

 

 

【佐野稔の舞評論】羽生、4回転5度も気力と体力問題なし

http://www.sanspo.com/sports/news/20151129/fgr15112905030002-n1.html

羽生はSP、フリーで4回転を合計5回跳んでも、まったく問題ない気力と体力を備えていた。冒頭の4回転サルコーは高さがあり、回転軸が細くて体が締まっていた。非常に回転効率のいいジャンプだった。

後半に組み込んだ4回転-3回転の連続トーループにも余裕が感じられた。続くトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)-2回転トーループは、GOE(出来栄え点)で3・00点の加点を引き出した。当初の構成から変更したものだが、かえって流れは良くなった。
演技点は100点満点で97・20点をマーク。この日以上の内容を残さないと、今後は同様の評価を得られないだろう。余計な心配をしてしまうほど、素晴らしいものを見せてくれた。
浅 田は3回転ルッツの踏み切りが不明瞭と判定されたが、違反でなかったことは大きい。中国杯まで好調だったトリプルアクセルの失敗は、蓄積された疲労が原因 かもしれない。GPファイナルではリベンジを期待したい。 (1976年インスブルック五輪代表、1977年東京世界選手権銅メダリスト)(紙面から)

 

 

オーサーコーチも興奮「偉大な瞬間。一生忘れない」

http://www.sponichi.co.jp/sports/news/2015/11/29/kiji/K20151129011595480.html

リンク脇で羽生の驚異的な世界最高得点を見守ったブライアン・オーサー・コーチは「偉大な瞬間だ。一生忘れないだろう」と興奮を隠しきれなかった。
課題としていた、後半の4回転を成功させたことを評価。今大会に向けた転機は2位に終わったスケートカナダだと語り、「あれから闘志がみなぎるようになった。ユヅルは勝つことが大好きだから。あれから人が変わった」と褒めちぎっていた。 [ 2015年11月29日 05:30 ]

 

 

羽生なりきった陰陽師 世界に「和」認めさせた

http://www.tokyo-np.co.jp/article/sports/list/201511/CK2015112902000135.html

<フィギュアスケート:グランプリシリーズ最終戦・NHK杯>◇28日◇長野市ビッグハット◇男子フリー
羽生結弦(20=ANA)が「日本」を世界に認めさせた。フリーのテーマ「陰陽師(おんみょうじ)」の世界を演じるためにこの夏、安倍晴明をまつる京都の晴明神社を参拝。日本文化への理解を深め、表現力を高めた。和風のプログラムは、今まで数々の日本人男子スケーターが挑戦しながら、認められなかった。世界最高得点に加え、もう1つの壁も破った。
今季、表現の幅を広げるため自ら選んだテーマは安倍晴明。愛読する作家夢枕獏原作の映画「陰陽師」のテーマ曲をアレンジし「SEIMEI」と名前も付けた。親しみと愛をもって、新たな挑戦に臨もうとした。
7月2日、深い理解を求めて、晴明神社を訪ねた。境内に入るとすぐに「気を感じる」と周囲に漏らし、警戒する様子を見せた。神の存在を演じることへの恐れが一気に湧いた。特別に見せてもらった非公開の肖像画に見入り、ご神木である樹齢300年のクスノキに手をあててパワーを受け取った。まるで晴明公に許しを請うように、10分もあれば見尽くせる境内を、1時間かけて集中して回った。この日の演技前。晴明公の紋である星印を胸に描き、祈るように天を仰いだ。心を込め、演じきった。
男子フィギュア界にとって「和物」は壁だった。佐野稔、五十嵐文男、鍵山正和、本田武史…。70年代から数々の日本を代表するスケーターが日本の曲を使いながら、世界大会で評価を得られなかった。佐野は七五調を基にした「荒城の月」、本田は民謡「木曽節」を使い、鍵山は法被を着て滑ったことがある。すべて理解されなかった。
なぜ羽生の陰陽師が評価されたのか。現在、浅田真央や男子の小塚を教える佐藤信夫コーチは変化をこう分析する。「昔はスケートは欧米人がやるものだったから、日本文化が理解されない部分は確かにあった。だが今はアジアの選手もたくさんいて、状況は変わってきている」。羽生が、日本の伝統的な節、踊りを伝えられるだけの高い技術、表現力を持っていたことも大きかった。
ホームの声援が、力になった部分もある。12月、スペインで行われるGPファイナルで再び「日本」を世界に発信する。【高場泉穂】
◆晴明神社(せいめいじんじゃ) 京都市上京区にある神社。平安時代中期の天文学者である安倍晴明公をまつる。晴明の活動拠点だった屋敷跡に晴明の死後、一条天皇が1007年(寛弘4)に創建。念力により湧かせたとされる井戸「晴明井」などがあり、パワースポットとして知られる。'

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http://www.nikkansports.com/sports/news/1572765.html

 

羽生 異次元の頂点 「心に残る演技を」

◇フィギュアスケート NHK杯
グランプリ(GP)シリーズ最終戦、NHK杯第2日は28日、長野市ビッグハットで行われ、男子はソチ冬季五輪金メダリストの羽生結弦(ANA)が世界初の300点超えとなる合計322・40点で優勝し、史上初の3連覇が懸かるGPファイナル(12月・バルセロナ)に進出した。女子は17歳の宮原知子(大阪・関大高)がGP初優勝し、浅田真央(中京大)は3位だった。 
羽生はフリーで3度の4回転ジャンプを成功させて1位となり、GP通算5勝目(ファイナルを含む)。SP2位で18歳の金博洋(中国)が266・43点で2位。無良崇人(洋菓子のヒロタ)が242・21点で3位に入った。
宮原は自己ベストの合計203・11点をマーク。SP4位の浅田はジャンプのミスが響いて182・99点にとどまったが、宮原とともにファイナル進出を決めた。
想定を上回る感触だった。スピードに乗ったまま3本目の4回転ジャンプに入った羽生は4回転トーループを跳んだ直後、続けざまに3回転のトーループに挑んだ。
当初は4回転-2回転の連続にする構成。瞬時の判断だったにもかかわらず、余裕をもって着氷させた。「後ろに3回転を入れられたことに達成感がある」。前戦のスケートカナダでは2回転で手を付いていた連続ジャンプを難なく決め、GOE(出来栄え点)でも1・71点の加算を得る鮮やかさもあった。
2位に終わった前戦後「血のにじむような努力をしてきた」。美学に反するのか自身は内容を明かさなかったが、指導するオーサー・コーチは「人が変わったように練習に取り組んだ」と明かす。
その結晶を氷上にちりばめた。最後のジャンプの後は小さく両こぶしを握り、スピンの停止とともに演技を終えると、大きく口を開けて、右腕を突き上げた。
8点台で高得点とされる演技構成点は5項目すべて9点台。基礎点では2位金博洋に2・99点差だったが、GOEと演技構成点で金に大差をつけた。
総合得点で世界最高を27点以上更新して300点を超え、歴史的得点が表示されると、口を覆って、目を見開いた。「まだふわふわしている」と会見では夢心地。自らをいさめるように「まだ平昌五輪でも、引退する試合でもない。もっともっと心に残る演技がしたい」と続けた。一人でしゃべり過ぎて、同席した金と無良が話す時間がなくなり「申し訳ない」と2人に頭を下げた。
昨季の演技前の衝突事故や手術を乗り越え、次々と難題に挑み続ける。今大会の会場は1998年に長野五輪が開催された舞台。演技直後に観客にお礼をしながら、左手で指したメーンスタンド上部。その先に五つの輪をかたどったエンブレムがあった。 (原田遼)
◆322.40点 高難度4回転が生んだ金字塔
羽生が金字塔を打ち立てた。ショートプログラム(SP)、フリーの合計でこれまでの世界歴代最高を27.13点も上回る322.40点。驚異的な高得点は、高難度の4回転ジャンプをより多く盛り込むことで生まれた。
SPではサルコー、トーループと2種類2度の4回転で自身の持っていた世界最高を更新。フリーでは2種類3度の4回転で、4回転-3回転の連続ジャンプを基礎点が1.1倍になる後半に跳んだ。
従来の世界最高だったパトリック・チャン(カナダ)の演技構成では、4回転はSPが1度、フリーは2度。いずれも基礎点が低いトーループだった。スピン、ステップを含めた技術点合計は、フリーで羽生が118.87点で、チャンは100.25点。SPでも羽生が7点以上上回った。
現行の採点方式は2003年から採用された。演技全体を6点満点で採点する従来方式から、ジャンプなど要素を細かく分け、合計する方式になり、高度な技を競い合う現在の図式が生まれた。
最初のシーズンの最高得点はエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の234.29点だった。それが今やジュニア世代でも4回転を跳ぶ選手が増え、高難度のルッツを盛り込む選手も出てきている。進化の流れは止まらない。

 

 

300点超えを生んだ羽生結弦の“気づき”   無駄ではなかった2つの苦い記憶

http://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201511290002-spnavi?p=1

見る者を驚愕させたスコア
「言葉では言い表せないです。実際、ユヅルがリンクから出てきたときもそう言ったんです。『言葉は何も思いつかない』と。本当にすごく偉大で魔法にかかったような瞬間だったと思います。みんながスケートにおける特別な瞬間を目撃したと思っていますし、一生忘れられない出来事だと思います」
 羽生結弦(ANA)のコーチであるブライアン・オーサーは、愛弟子の演技について感想を求められるとそう答えた。

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28日に行われたフィギュアスケートのNHK杯男子フリースケーティング(FS)で、羽生が再び金字塔を打ち立てた。前日のショートプログラム(SP)では世界歴代最高得点を更新する106.33点をマーク。FSでもいまだかつて誰も成し遂げていない200点超えの期待が高まる中、20歳の五輪王者は見る者の想像をはるかに上回る結果を残した。
 冒頭の4回転サルコウはGOE(出来栄え点)で2.86点が付くきれいなジャンプで成功。続く4回転トウループ、演技後半に入れた4回転トウループ+3回転トウループのコンビネーションも見事に決めてみせる。スピンとステップにもすべて加点が付いた。アナウンスされた点数は216.07点。SPとの合計322.40点という驚異的なスコアに、会場内はどよめきに包まれた。興奮冷めやらない羽生は両手を突き上げて喜びを爆発させると、続けて行われたインタビューでは驚きと感謝の気持ちを伝えた。
「本当に信じられないです。スコアにはびっくりしましたけど、実際にスケートカナダが終わったあとから、NHK杯まで血のにじむようなつらい練習をしてきました。練習をサポートしてくださった方々、拠点としているカナダのクリケットのリンク、自分が生まれ育った仙台のリンク、すべてに感謝したいと思います」

スケートカナダ以降「人が変わった」
 羽生がミックスゾーンに現れたのは、演技終了から約40分後。表彰式やアイシングなどを終え、すでに普段の冷静さを取り戻していた。今後に向けて挑戦することについて聞かれると、間髪入れずにこう答える。
「技術的なところで言うと、4回転ループを試合で組み込むまでには至っていません。まずはそこを練習していきたいと思っています。ただ、それはすぐにできるようになるとは思っていません。そして次の試合からは今回自分が出した322点という得点、SPの106点という得点、FSの216点という得点が、プレッシャーとなって降りかかってくる。それに打ち勝つ、それをコントロールする精神力をつけなければならないと今は考えています」
 今大会で羽生が飛躍的に点数を伸ばしたのは、4回転を多く取り入れたジャンプ構成もさることながら、メンタル面のコントロールがうまくいったことも1つの要因として挙げられる。これまで積み重ねてきた経験が生きたようだが、中でも羽生が具体的な例として挙げたのが先日のスケートカナダと昨年のソチ五輪だった。
 スケートカナダではSPでミスを連発し6位スタート。FSで巻き返したが、優勝したパトリック・チャン(カナダ)には及ばず2位に終わった。その悔しさをバネに、それからは厳しくも納得いく練習を積むことで、試合に向けての自信を深めていった。SPはこれまでノーミスで演技を終えたことがないプログラムにもかかわらず、NHK杯では「ワクワクしていた」と語ったほどだ。

オーサーコーチは振り返る。
「スケートカナダは非常に良い教訓だったと思います。ユヅルはさまざまな経験を経て、より競技者として力をつけましたし、闘志がみなぎるようになりました。ユヅルは試合で勝つことが大好きですが、スケートカナダでは勝てなかった。特にSPは最悪でした。ただ、たまにはああいうことがあったほうがいいんだろうなとも思ったんです。スケートカナダ以降、ユヅルは人が変わったみたいでした。今回も現地入りしてからの準備がすごく良かったんです。いつもより落ち着いていて、非常に自信も持っていました。ユヅルは大会にどうやって臨めばいいのか、自分なりに見つけたんだと思います」

一方、SPで世界歴代最高得点を出し、FSを迎えるというのはソチ五輪と同じシチュエーションだった。当然、選手としては欲が出る。五輪のときはそれが「金メダル」だった。しかし当時、羽生はその意識に気づいていなかった。いや、あえて蓋をしていたと言ったほうが適切かもしれない。結果のことを考えず、自分の演技に集中することがベストだと考えたのだろうが、無理に金メダルへの欲を隠すことでかえって意識してしまい、緊張を増幅させてしまったのだ。最終的に金メダルを獲得したものの、それは“気づき”として羽生の頭に残っていたという。
 そしてその気づきは、NHK杯で生きることになる。羽生がSPの結果を受けて意識したのは「FSでの200点超え」と「合計スコアでの300点超え」だった。そこで羽生はどうしたのか。
「やりたいと思っていること、プレッシャーとして降りかかるようなことを考えている自分を認めてあげたんです。今回は試合に入る前からFSで200点を超えたいとか、合計で300点を取りたいという気持ちが少なからずありました。それにちゃんと気づくことができ、なおかつ自分がプレッシャーを感じていることに気づくことができました。こうしたことに気づけたのも、今までのたくさんの経験があったからこそ。これまでやってきたことが無駄じゃなかったんだなと思います」
 かつての苦い経験を糧にし、未来の成功へと生かしていく。羽生が次々と偉業を成し遂げていけるのは、当たり前のようでいてなかなかできないことを、忠実にやり抜く器量を備えているからだろう。それは人間力の高さに他ならない。

もっと難しい4回転を跳べるように
 前人未到の高みに到達した羽生は、今後どこに向かっていくのか。オーサーコーチは愛弟子の底知れぬポテンシャルに目を細める。
「まずはこの瞬間を満喫してほしいと思っています。それが終わってから実際に演技を振り返って、今後どうしていくかを2人で考えていきたいです。まだシーズンは始まったばかりですし、ユヅルはもっと成長すると思います。その一方で今回の演技を超えるのはなかなか大変でしょう。おそらく誰も超えられない。超えられるとしたらそれはユヅル自身しかいないと思います」
 これまでもそうであったように、これからも自分との戦いが続く。NHK杯でマークした点数を超えるためには、エレメンツの精度をさらに上げるか、より難度の高い4回転ジャンプが必要になってくるだろう。今シーズンからシニアに参戦している金博洋(中国)は中国杯で4回転ルッツのコンビネーションジャンプを史上初めて成功させた。NHK杯でも4回転ルッツを軽々と決めている。
「僕は金選手のように4回転ルッツは安定していないです。1回まぐれで下りたことがあるくらいで、彼のようなクオリティーでルッツも4回転ループも跳ぶことはできません。そして4回転アクセルも数回チャレンジしてみて、着氷することも回転することもできていません。将来的に4回転がどれだけ必要なのかは分かりませんけど、金選手はジュニアから上がってきて、今大会のSPとFSで4回転を後半に入れるという素晴らしい演技をしました。これはスケート界の将来を見ているような気もします。それが正解というわけじゃないですけど、僕自身もできることをすべて出し切って、もっともっと難しい4回転、質の高い4回転を跳べるように頑張りたいと思います」
 この偉業もあくまで通過点。まだ見ぬ自分と出会うために、羽生結弦の挑戦意欲はますます高まっていくばかりだ。
(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

 

羽生史上初300点超え別次元V!「陰陽師」野村萬斎さんから演技の神髄吸収

http://www.daily.co.jp/general/2015/11/29/0008604780.shtml?pg=2

デイリースポーツ

「フィギュアスケート・GPシリーズ最終戦・NHK杯」(28日、長野ビッグハット)

 男子フリーが行われ、前日のSP(ショートプログラム)で自身の世界最高記録を更新する106・33点を記録した羽生結弦(20)=ANA=が完璧な演技を見せ、フリーでも216・07点、総得点も322・40点の世界記録をマーク。今大会3つの世界新を樹立する圧巻の内容で、3年ぶり2度目の優勝を飾った。羽生は史上初の3連覇が懸かるGPファイナル(12月10日開幕・バルセロナ)への出場を決めた。

 氷上に舞い降りた陰陽師は悪霊も重圧も、そしてフィギュア界の常識をも打ち破った。荘厳な和笛と太鼓が鳴りやむと、羽生が力強く右拳を振り下ろした。計3本の4回転を含め、全ジャンプを完遂。SPに続き、フリー、総得点でも世界記録更新の確信はあったが、表示された得点は、その羽生でさえも驚かせるものだった。

 フリーで史上初の200点超えとなる216・07点、総得点では史上初の300点超えとなる322・40点が表示されると、両手を頬にあて、目を丸くした。これまでチャンが持っていた世界記録をフリーだけで19・32点、総得点で27・13点も上回る別次元のハイスコアに「いまだに信じられない。ただ、得点は狙っていた。“絶対王者だぞ”と言い聞かせて、プレッシャーをかけていた」と、破顔一笑した。

 こだわりのプログラムで、金字塔を打ち立てた。陰陽師、安倍晴明を演じるフリー「SEIMEI」は自身初の“和”のプログラム。「苦手」と話すややスローな曲調だったが、初めて自身も編曲にも携わり、ジャンプを跳びやすくするため、コンマ数秒単位で曲のピッチを調整した。

 シーズン前には映画「陰陽師」で安倍晴明を演じた狂言師、野村萬斎さんと対談する機会もあった。指導されたのは、動きの一つ一つに意味を持たせること。演技開始時のポーズは、萬斎さんの教えからアレンジした。この日の表現力を示す5項目の構成点では、驚異的ともいえる9点台中盤から後半が並んだ。“天才”と称される希代の表現者から、演技の神髄を吸収し、それを氷上で体現した。

 おそらく未来永劫(えいごう)語り継がれる演技で、男子では史上初の3連覇が懸かるGPファイナルへの切符を手にした。「まだこれが平昌(五輪)でもないし、引退の試合でもない。もっともっとみなさんの心に残る演技をしていきたい」。14年ソチ五輪の金メダルは、伝説の序章にすぎなかった。天井知らずのハイスコアに、今後もさらに刻まれていくだろう数々の記録-。羽生が刻む氷上の軌跡の終着点は、まだまだ見えてこない。