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2016.04.03 - web sportiva - 世界選手権、まさかの2位。羽生結弦が語った悔しさと敗因

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi  能登直●撮影 photo by Noto Sunao
 世界フギュアスケート選手権男子。ショートプログラム(SP)で110・56点を出してトップに立ち、2年ぶり2度目の優勝は確実だと思えていた羽生結弦。だが、4月1日のフリーで彼を待っていたのは、意外な結果だった。

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世界選手権で2年連続2位の羽生結弦。優勝はハビエル・フェルナンデス
 ANAスケート部の城田憲子監督が「恐る恐る」と表現したように、演技の出だしは慎重に入った。だが、直前の6分間練習でしっかり降りたあと、再度確認するようにもう一度跳んでいた冒頭の4回転サルコウは、着氷をしっかり決められず手をつくミス。
 その後の4回転トーループと3回転フリップは確実に決め、ステップシークエンスはレベル4を獲得したものも、いつものような気迫が全身から滲み出てくる滑りではなかった。そして、後半に入ってすぐの4回転サルコウは軸が斜めになって転倒してしまうと、その後も3連続ジャンプでは、ふたつ目のトリプルアクセルで着氷が乱れ、3番目につけるサルコウを3回転から2回転にするのが精一杯。さらに、最後のジャンプの3回転ルッツでも着氷を乱して手をつくなど、ミスを連発した。
 最後は疲労も見え、スピードがガクッと落ちる演技。万全な調整をしてきていたはずの羽生にとって、予想外ともいえる展開だった。

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フリーではジャンプのミスで得点が伸びなかった 
 結局、フリーは184・61点で合計295・17点。その時点ではトップに立ったが、躍動感あふれる滑りでジャンプもすべてを完璧に決めたハビエル・フェルナンデス(スペイン)が、羽生が持つフリー世界最高得点記録に3・07点差まで迫る216・41点を出し、羽生の2度目の優勝は消えた。結果は、世界選手権の連覇を果たしたフェルナンデスに19・76点差を付けられる2位で終わった。
「自分自身は非常に落ち着いていたと思います。ただ、その落ち着きというものがプログラムにすべて影響するものではないと思っていますし、身体の状態や精神状態とのバランスがものすごく大切だと思います。滑っていて気がついたのは、すごく緊張していたことです。ジャンプも全部跳びたいと思っていましたし、いい演技をしたいと思ってもいました。欲張るというのはいいところもあると思うけど、実際、結果が悪かったのでいろいろ考え直さなければいけないなと思いました」
 羽生は、一部溶けていたこの日のリンクの氷の状態を「氷は毎日変わるもの。それでもできる人はできるから、そこでできなければ話にならないと思う」と言う。だが、同じようにジャンプでミスを連発してSP3位から8位に順位を落としたパトリック・チャン(カナダ)が「氷は悪かった」と口にしたように、水さえ浮いていたリンクは、羽生やチャンのようなタイプの選手にとっては難しいものだったといえる。

 事実、羽生は昼の公式練習で、4回転ジャンプを跳んだあと氷上に残っている自分がジャンプに入った軌跡を確認することが何度かあり、それだけ彼も神経質になっていたのだろう。
「どんな大会の本番でも緊張するものですけど、今回はその緊張の質にうまく対応できなかったのだと思います。緊張をしたことで、あらためて世界選手権は大きな舞台だなというのをすごく感じましたし、すごくドラマがある舞台だなと。率直な気持ちを言うと、やはり、この舞台で金メダルを獲れないようではまだまだだな、と感じています」
 自分を納得させようとするかのように、こう話した羽生。彼にとって幸いといえるのは、昨年のNHK杯とグランプリファイナルで300点超えを連発し、「次は自分の記録との戦いになるかもしれない」という状況が、今回、完璧な演技で314・93点を出したフェルナンデスや、2月の四大陸選手権フリーで200点超えを果たしたチャンが、羽生に迫ってきていることで変化していることだ。
 それはつまり、「少しでもミスをすれば負ける」という緊張感を持てる状況。彼らのような激しく競り合うライバルがいることが、羽生にとってさらなる進化を希求する大きな原動力になるはずであり、この先、ひとり孤独に高みへ進むのとは違う、大きなエネルギーを秘めていると言えるのではないだろうか。

sportiva.shueisha.co.jp