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2016.09.01 - sponichi - 羽生結弦 12席分のトリプルアクセル

栗将军中译

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昨年11月28日撮影の羽生結弦選手のアクセルジャンプの合成写真。座席12席分をぶっ飛んだ

【長久保豊の撮ってもいい?話】羽生結弦選手が異質のアクセルを飛んだのは昨年11月、長野でのNHK杯のことだった。前日のSPで2位以下をぶっち切り、フリー当日の午前練習。全選手の曲かけ練習が終わりカメラマン席には弛緩した空気が漂っていた。他の選手たちから距離を置き、彼がトリプルアクセルを2回飛んだ。そして助走スピードを上げた3回目だった。恐ろしく飛距離の長いアクセルを飛んだ。1回転、2回転…。シャッター連射のすき間から彼が回転を途中で切り上げ着地したように見えた。

 「やめたよね?」。

 「うん途中で降りた」。

 失敗?カメラのモニターで確認してみると間違いなく3回転半回っている。

 そして4回目のアクセル。今度は恐ろしく高く飛び、派手にコケた。

 飛距離の長いジャンプと高さのあるジャンプ。単なるバリエーションだったのか、4回転半への挑戦の過程だったのか、それはわからない。

 先月27日、羽生選手がお茶の間に元気な姿を見せてくれた。4月の左足甲の負傷以来、断片的にしか伝わってこない彼の情報にやきもきしていたファンも多いはず。来月にはGPシリーズも開幕、新プログラムや衣装についての情報を求める声も日増しに高まっている。

 平昌五輪のプレシーズン。五輪で勝つための条件が見えてくる。フリーは「3種類、4本の4回転」時代となるのか、あるいはそれ以上か。金博洋選手には4回転ルッツがあり宇野昌磨選手もフリップを成功させた。五輪王者の3種類目の4回転に注目が集まるのは当然だ。

 練習やエキシビションで4回転ループの成功は何度も見た。昨年末の真駒内ではルッツにトライする姿も見た(開場前のリンクに機材を置きに行ったら、たまたま見えちゃったんです。ゴメン)。だがそれはすべて昨シーズンまでの話。

 ボクは17歳の彼を知っている。

 今や伝説となった2012年フランス・ニースでの世界フィギュア。

 その時、彼の足が傷ついていたことも知っている。

 「彼を止めろ。これ以上滑ったら靭(じん)帯やっちゃう(ボクはヒザの故障だと思っていた。だが後日、足首の捻挫だったと明らかになる)」。おそらく彼も耳元で同じことをささやかれていたのではないか。彼はそれを振り払うように吠え、カメラのファインダーに収まりきれない激しさで4分30秒を舞った。

 弾ける歓声の中で「あいつの足、壊れてたよね?」と言って泣き、「オレ、あいつを小さな頃から知ってるんだよ」と言って泣き、「あいつ、遠くへ行っちゃったよ」と言って泣く。そういうカメラマンたちの姿を知っている。

 今も彼の本質はあのころと変わっていないことを知っている。知っているから怖い。今シーズンに限って言えばライバルたちが4回転の種類や本数を増やそうと彼の絶対性は不変だ。だが彼は圧倒的なプログラムで勝とうとするだろう。彼はバンクーバー五輪のライサチェクにはなれない。

 負傷の不安やわれわれが抱える心配をも戦うモチベーションに変えてしまう人だから余計なことは言うまい。そして気の早い話だが平昌で滑り終わったら指を1本、すーっと天に向けて立ててもらいたい。ニースのときと同じように。そうしたらボクも泣いてしまうだろうな。(編集委員)

 ◆長久保 豊(ながくぼ・ゆたか)1962年生まれの54歳。都立両国高校から帯広畜産大学卒。写真部所属のカメラマンで、95年の東京写真記者協会賞グランプリをはじめ、計4度の受賞歴あり。フィギュアスケートの著名コーチと同姓でよく関係を疑われるが、全くの別人。

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