2017.02.16 - web sportiva - 羽生結弦、4回転を跳びまくる四大陸のライバルたちに「感謝している」

Day 1 OP    ▶YUZURINK中译
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/figure/2017/02/16/post_2/
 平昌五輪の会場・江陵アイスアリーナで開催されるフィギュアスケート四大陸選手権を前に、14日昼に最初の公式練習がメインリンクで行なわれ、羽生結弦は落ち着いた表情で動きをチェックした。
「ソチ五輪を彷彿させる青を基調にしたリンクで非常に滑りやすい気温でしたし、氷の状態もよかったです。何よりこの会場でいいコンディションで滑れることが幸せだなと感じていました」
 この日の練習は、宇野昌磨も含めて3名のみの滑走。羽生は会場のあらゆる方向に視線を向け、天井や光の様子、曲かけ練習での音を確認していた。曲かけではショートプログラム(SP)を選び、前半はジャンプを跳ばないでつなぎのみを意識する滑り。後半はトリプルアクセルからスピン、ステップまで続けると、少し間を置いてから最後のコンビネーションスピンで曲かけ練習を終えた。
 その後はトリプルアクセルからの連続ジャンプや4回転トーループ、4回転サルコウ+3回転トーループを確認するように跳ぶと、4回転ループに挑戦。最初は転倒したが、その後2回のパンクのあとにきれいに決め、続く2回も着氷を乱しながらも何とか降りた。そして、終盤にはフリーの3回転フリップから後半の連続ジャンプに移る流れを2度試して、この日の練習を終了した。
「年が明けてからの練習は順調で、何事もなくいい練習ができていました。トロントの練習でも、特別に何をするということもなかったです。もちろんその試合その試合で課題が見つかっているので、それを意識する練習方法に変える時もありますけど、自分の中で練習方法はだいぶ確立できているので、『ここを重視する』ということもなく、普通にやってきました」

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公式練習で順調な動きを見せた羽生結弦

 昨年12月末の全日本選手権欠場の悔しさを晴らすという意識は「あまり持っていない」という。羽生は「四大陸は四大陸。最終的にはこれが来年の平昌五輪へ向けての予行演習ということになるかもしれないですが、それを特別に意識することなく、今やるべきことは何なのかだけを考えて大会に臨みたい」と語った。
男子SPが行なわれるのは17日。その点では「まだきつめのトレーニングをしても大丈夫かな」と考え、体の感覚も確認しながらできたという。

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全日本を欠場したあと、2カ月ぶりの試合に臨む羽生結弦
 
 練習自体は全体的に軽めだったが、体の状態は悪くないようだ。4回転ループを含め、ジャンプをしっかり跳べた時の動きは、体に力が入っていない軽さとキレがあった。そんな順調さが、余裕を持った練習につながったのだろう。
 練習の最後で、今シーズンなかなかうまく決められていないフリー後半部分を念入りにチェックしていたことに関して、羽生はこう話す。
「これは、これまでの練習でもやってきたことです。年が明けてから、前半最後の3回転フリップから後半の4回転サルコウ+3回転トーループへ入るコースを少し変えたので、そういった部分の確認もあります。いつも通りの練習の感覚を重視してやっていました」

 2カ月ぶりの試合だが、「特に気負うこともなく臨めている」と言う羽生は、複数種類の4回転ジャンプを入れてくる若手の台頭についてこう話した。
「それは本当にありがたいですし、感謝の気持ちで一杯です。いろんな4回転をフリーで5本跳ぶ。そういう中で誰かが頭ひとつ抜け出しているというのではなく切磋琢磨している状況ですから、自分が跳べるジャンプをすべてプログラムに入れて、みんなが限界のプログラムに挑戦できている。彼らに対して尊敬の念を持っていますし感謝しています」
 羽生にこう言われた存在のひとりである宇野も、この日の公式練習では複数種類の4回転にチャレンジしていた。そして、今大会のフリーで「4回転ループを入れる」とも宣言した。
「今日の4回転で失敗が目立ったのはループだったと思いますけど、ループ自体は10回に1回成功すればいい方なので、失敗にも焦りはないし『1本跳べてよかった』という気持ちです。ダブルアクセル+4回転トーループも練習ではやるようにしていますけど、『あそこから跳べれば単発なら楽に跳べる』という自信がつくということに気づいたので、ウォーミングアップというか、気持ちを整えるひとつとしてやっています。だから4回転ループに関して、今回は、どこか痛いのでなければ、調子が悪くても入れていく予定です」(宇野)
 この試合に集中すると同時に、その先を見据えて大会に臨もうとしているのは、羽生も宇野も同じだろう。ネイサン・チェン(アメリカ)やパトリック・チャン(カナダ)も出場し、強敵ぞろいの今回の四大陸選手権。羽生の落ち着いた表情からは、この大会に懸ける強い思いを感じた。