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2017.04.02 - web sportiva - 大逆転の羽生、無心の宇野。 日本男子フィギュアが世界でワンツー

Worlds FS

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi能登直●撮影 photo by Noto Sunao
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/figure/2017/04/02/___split_5/

 4月2日に行なわれた世界フィギュアスケート選手権の男子フリーで、まさかのSP5位発進となっていた羽生結弦が「これしかない」という大逆転劇を見せた。

http://i.imgur.com/omr6BKC.jpg
 6分間練習では、SPで失敗した4回転サルコウ+3回転トーループを余裕で成功させ、次の4回転ループもしっかり跳んでいた。そして、最終グループ第1滑走者として迎えた本番では、しなやかで流れのある滑りを披露。少しスピードを上げて臨んだ後半の4回転サルコウ+3回転トーループをGOE(出来栄え点)加点2.43点で決めて勢いに乗り、その後の4回転トーループも成功させて見ている者を安堵させた。
 得意とするトリプルアクセルからの連続ジャンプや3回転ルッツもきっちり決め、今シーズン初のノーミス演技で大会を終えた羽生は、フリーについてこう振り返った。
「ショートのあとはすごく落ち込んでしまって、なかなか立ち直ることができませんでした。でも、チームの人たちやファンの人たちが信じてくれていたのが、この演技につながったんだと思います。演技内容を忘れるくらい、ひとつずつ集中して一所懸命やれたと思うし、今の自分を表現しきれたと思います」
 羽生のフリーの得点は、自身が15年のGPファイナルで出した世界歴代最高得点を3.72点更新する223.20点。合計も自己サードベストの321.59点にしてトップに立った。
 その高得点が、後に続く選手たちにプレッシャーを与えた。
 第2滑走のネイサン・チェン(アメリカ)は、SPや公式練習で調子に乗り切れていなかった不安をそのまま出す滑りとなった。これまでは完璧に決めていた最初の4回転ルッツで転倒し、後半の4回転サルコウも失敗するなど、合計を290.72点までにしか伸ばせず6位に終わる。
 続くSP3位のボーヤン・ジン(中国)は、ルッツを含む3種類4回の4回転ジャンプをすべて決めるなどノーミスの演技をし、得点はSPに続く自己最高の204.94点を獲得したが、合計を自己最高の303.58点に伸ばして3位に食い込むのが精一杯。SPでは完璧な演技で自己最高の102.13点を獲得していたパトリック・チャン(カナダ)も、今季からフリーのプログラムに入れた4回転サルコウはきれいに決めたが、その後のトリプルアクセルと後半の4回転トーループで着氷を乱したミスが響き、295.16点の5位にとどまった。
 そして、SPで羽生に10.66点差をつける自己最高の109.05点を出し、大会3連覇へまい進していた最終滑走者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)は、4回転サルコウからの連続ジャンプのセカンドで着氷をミスしてから少しリズムを乱した。後半に4回転サルコウなど複数のミスが出て192.14点にとどまり、合計もジンに及ばない301.19点で表彰台を逃すことになった。
 そんな神経戦の中で「我関せず」の演技をしたのが、フェルナンデスの前の5番滑走だった宇野昌磨だ。普通の選手ならば、優勝争いをするライバルの演技はプレッシャーになるものだが、宇野は「他の選手の演技を見ないようにしようとかではなくて、逆に見たいんです。それが自分の演技に影響するとは思わないし、うまい選手の演技は見たいと思うじゃないですか」と、平然とした顔で言う。
「他の選手たちはほぼノーミスの演技をしていたけど、自分は去年のような失敗をしないで、楽しんで滑れればいいと思っていたので影響はなかったと思います。むしろ、300点台とか290点台のすごい演技を見て、自分がどんな演技をしても絶対に勝てないという確信も生まれたので……。もう開き直って、普通に自分のことをやろうと思いました」
 無心ともいえる心構えで臨んだ宇野は、6分間練習でもジャンプのハマりはよく、「ループもフリップも跳べる気がしていた」と気持ちにゆとりがあった。それが本番でも演技に余裕を与え、3回転ルッツのステップアウトと4回転トーループのわずかな着氷の乱れはあったが、自己最高の214.45点を獲得。3月のプランタン杯に続く自身2度目の300点超えを達成し、羽生を除くと歴代最高の319.31点まで伸ばして羽生に次ぐ2位に入った。
 世界選手権での日本勢のワンツーフィニッシュは、07年女子の安藤美姫と浅田真央、14年男子の羽生結弦と町田樹に続く3度目の快挙。4回転時代に突入して技術レベルが一気に上がり、パーフェクトな演技をすること自体が難しくなっている男子の戦いに「絶対」はないが、来年の平昌五輪へ向けて期待が膨らむ結果になった。