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2017.04.15 - web sportiva - ジャンプは美しく跳ぶ。羽生結弦の強さを支える「出来栄え点」の威力

Worlds Recap
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi能登直●撮影 photo by Noto Sunao
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/figure/2017/04/15/___split_7/

 4月1日に行なわれた世界選手権フリーで、羽生結弦が2015年12月のグランプリ(GP)ファイナル以来となる、世界最高得点を更新(223.20点)した。それは1シーズンぶりの満足感を彼にもたらしただけでなく、さらなる高得点の可能性を示す滑りでもあった。

http://i.imgur.com/aAymPkk.jpg
世界選手権を大逆転で優勝した羽生
 2年前にNHK杯、GPファイナルと連続して最高点を更新した時は、共にショートプログラム(SP)で完璧な演技をして勢いに乗った状態だったが、今季の世界選手権はSPで想定外のミスをして5位発進と精神的に追い込まれた状況だった。その上、プログラムも昨季の『SEIMEI』のようなハッキリして力強い曲ではなく、静かな曲調でジャンプを跳ぶタイミングをつかみにくいものだったにもかかわらず、羽生はシーズン初のノーミスの演技を披露した。
 それが歴史に残る大逆転劇につながったわけだが、演技の完成度について羽生自身は納得していない。特にジャンプの美しさに関しては、「小さい頃から着氷の後に流れるようなジャンプをすることを教えられてきたのが、自分の強みのひとつでもある」と自信を持っていて、常にGOE(出来栄え点)で満点となる「3点」の獲得を目指しているからだ。

 世界選手権フリーのジャンプの加点は、最初の4回転ループでSPと同じ2.43点をもらい、次の4回転サルコウは2.71点。後半の4回転サルコウ+3回転トーループと4回転トーループは2.43点で、得意なトリプルアクセルからの連続ジャンプは2.00点と2.14点。2.1点の加点が最高の3回転ジャンプ2本も共に1.50点と、ジャンプだけで17.14点の加点(ステップなどを含めた合計は22.69点)を稼いだが、GOEで満点評価のジャンプはひとつもなかった。
 一方で、2015年のGPファイナルの場合は、4回転がサルコウ1本とトーループ2本の構成で、技術基礎点は現在より8.24点低かったものの、最初の4回転サルコウと4回転ループ、後半のトリプルアクセル+2回転トーループで満点。ジャンプのGOE加点で今回の世界選手権より3.04点高い20.18点を獲得している。
 演技構成点(スケーティング技術や曲の理解度など5項目)に関しても、2015年GPファイナルのほうが1.48点多かった。ただ、今のプログラムは構成が難しい分だけ完成形を作り上げるのは難しいが、GPファイナルと同じような完璧な演技ができれば、単純計算で4.52点多い227.72点を出せることになる。

 さらに、羽生が世界選手権のフリーの後で「トリプルアクセル+2回転トーループの後で感触がよければ、次の(3連続ジャンプの最初の)トリプルアクセルを4回転トーループにしようかとも考えていた」と振り返っていたように、得点を伸ばす要素はまだ残っている。可能性を挙げればキリがないが、羽生のGOEの高さが、他の選手と比べて大きな武器になっていることは間違いない。
 昨年の世界選手権フリーでハビエル・フェルナンデス(スペイン)が当時歴代2位の記録(216.41点)を出した際には、4回転はサルコウが2本でトーループが1本、トリプルアクセル2本という構成で合計23.32点の加点。また、昨年の四大陸選手権で203・99点を出したパトリック・チャン(カナダ)は、4回転トーループを前半に2本、トリプルアクセルを前半と後半に1本ずつ入れる構成でGOE合計21.18点を獲得している。
今年の世界選手権で、羽生が得たGOE加点の合計は22.69点だったが、4本入れた4回転ジャンプのうち2本を後半に跳び、トリプルアクセルを2本とも連続ジャンプにするなど、極めて難しい構成でそのGOE加点を出しているところが特筆すべき点だ。

 他にフリーで4回転ジャンプを4本以上入れている選手で見ると、最も羽生に近い得点が期待できるのは宇野昌磨だ。世界選手権フリーで羽生、フェルナンデス以外では過去最高となる214.45点を出した時のGOEは15.29点だったが、3回転ルッツと4回転トーループで合計2.33点減点されているため、すべてがうまくいけば20点台に乗せられる可能性はある。それに対し、同大会で204.94点(歴代4位)を出したボーヤン・ジン(中国)の加点合計は15.24点。四大陸選手権で羽生を押さえて優勝したネイサン・チェン(アメリカ)も、非公式得点ながら212.08点を獲得した全米選手権フリーでの加点合計は14.92点にとどまっていて、羽生との差は大きい。
 難しい構成で高いGOE加点をもらうことはそれだけ難しいということ。「ジャンプは跳ぶだけではなく、美しく跳ぶもの」という意識を持ち、それを実践していることが羽生の最大の強みなのだ。