2015.10.30 - web sportiva - Day 1 OP - スケートカナダ公式練習後、羽生結弦が語った「心構え」(折山淑美)

スケートカナダ公式練習後、羽生結弦が語った「心構え」

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 

カナダ、カルガリーの南に位置するレスブリッジで開催されるスケートカナダの初日、10月29日。午前の練習を休んで午後の公式練習に臨んだ羽生結弦の動きは、余裕を感じさせるものだった。

 曲がけの順番は5番目。ジックリと体を慣らしてから始めたジャンプもしっかりと間合いをとって確実に決め、トリプルアクセル、4回転トーループ、4回転サルコウと冷静にこなしていった。

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スケートカナダの公式練習に臨んだ羽生結弦

  そして、フリープログラム『SEIMEI』の曲が始まると、最初の4回転サルコウと4回転トーループをきれいに決める。3回転フリップのあとのスピンを飛 ばしてステップシークエンスをこなし、後半の4回転トーループも、4回転-2回転を成功。その後も3回転ループを抜いた以外のジャンプをきれいに決め、最 後はチェンジフットコンビネーションスピンで締めた。

「とにかく悪いイメージをつけないように、ということを常に意識しています。やはり今 回の試合も、前回のオータムクラシックもそうでしたけど、練習を2回やってすぐにショートプログラムなので、とにかくジャンプは無駄な本数を跳ばないよう にしようと。筋肉もそんなに簡単に回復するわけではないので最小限のことをやって、自分で納得したうえでジャンプを跳んでいこうと思っていました」

こう話す羽生は、練習の最後の数分のほとんどをブライアン・オーサーコーチとの会話に費やした。そしてそれが終わると、確認するようにスピンの練習をして、公式練習を終えた。

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ジャンプ、スピンなどを確認し、練習中には笑顔も

ジャンプ、スピンなどを確認し、練習中には笑顔も

「1週間だけでジャンプの精度が上がったり、実力が上がるわけではないと思いますけど、リンクや周りの環境であったり、自分の心の問題とか、頭の中などがうま く合って今日はいい練習ができたと思います。ただ今日はフリーをやっただけですし、明日はショートなので。そこはちゃんと頭を切り換えて、今日よかったこ とを頭の中に残しながら、明日のショートに向けてやるべきことをやらなければと思います」

 10月中旬にオータムクラシックを戦い、しっかりと「試合勘を取り戻せたことが大きい」と言う羽生は、その後の練習では「試合のために何をするかということを考えてやってきた」とも言う。だからこそ、 昨シーズンの初戦だった中国杯とは違い、「後半の4回転ジャンプを決めなければ」という気負いもない。

そのあとのジャンプもしっかり意識し、「全体を通してしっかりと試合でも通用するものをということを考えて練習をしてきたつもり」と語った。

「もしかしたら、パトリック・チャン選手がいるからこそ落ち着いていられるのかな、とも思いますね。彼が戻ってくるということは、どの選手にとってもすごい刺 激になるし、意識をしてしまうと思うんです。別に特別な対抗意識を燃やしているというわけではないけど、安心感というか張り合いがあるというような感じ で。とにかく彼が戻ってきてくれて、(彼が自分を)ライバル視してくれているという嬉しさもあるし、僕自身も彼とまた一緒に競技ができるという嬉しさもあ る。だから、それをかみしめながらちゃんと意識して、自分のことに集中できるように持っていけたらと思います」

 こう言って微笑む羽生は、静かな、そして素直な気持ちで本格的なシーズン開幕に臨もうとしている。

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