2017.03.29 - web sportiva - Worlds Day 2 OP - 気持ちの高まる羽生結弦と宇野昌磨。ヘルシンキから詳細をレポート

折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi能登直●撮影 photo by Noto Sunao
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/othersports/figure/2017/03/29/___split_2/

 フィンランドのヘルシンキで開催されている世界フィギュアスケート選手権。男子のショートプログラム(SP)を2日後に控えた3月28日、メインリンクでの公式練習に、羽生結弦は余裕を持った雰囲気で臨んでいた。

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 曲かけの順番は、6人全員がフリープログラムをやる中で4番目。それを待つ間、羽生は入念にスケーティングし、ステップシークエンスを丁寧に滑った後で3回転ルッツを跳ぶ。さらに、間隔を開けて3回転フリップやトリプルアクセルからの3連続ジャンプ、そしてトーループとサルコウ、ループの4回転ジャンプをひとつひとつ確認するように跳んだ。
「同じメインリンクでも昨日とは氷の感覚が違っていたので、そういうことの確認とか、本番ではお客さんも入るのでそういう時にどうなるのかとか……。今日は外の気温が少し下がって、氷もちょっと締まったのかなというのもあるので、そういうことも確認しながら練習ができたと思います」
 曲かけの順番になると、最初の4回転ループは少しだけ着氷を乱したが、続く4回転サルコウはきれいに決め、スピンからステップ、3回転フリップへとつないだ。
 後半の4回転サルコウが2回転になり、次の4回転トーループで手をついても流れを止めず、トリプルアクセルを跳んで2本目の4回転トーループに挑戦。それが2回転になった後で初めて少し間をとったが、すぐにコレオシークエンスを滑りだすと、3回転ルッツの代わりにトリプルアクセルからの3連続ジャンプを跳び、最後はコンビネーションスピンで締めた。
「最後の3連続ジャンプはリカバリーですね。本当は4回転トーループの後にやろうと思っていたけど、少しトリプルアクセルが乱れてできなかったので入れました。その意味でもいろいろ考えながらやりました」
 この練習で意識していたのはジャンプだといい、ステップやコレオシークエンスなどは動きを確認するだけのような軽い滑りでこなしていた。2月の四大陸選手権以降は曲を通す練習を多くやり、「試合へ向けての練習をすごく意識していた」と話すが、この日も自分でチェックが必要と感じたことに意識を集中していたのだろう。
 そこまで余裕を持てるのは、準備がしっかりできているという証(あかし)だ。羽生自身も、「コンディションはすごくよくて、感覚も非常にいいと思います。ひとつずつしっかり確認しながら、本番に向けて追い込みをしたり回復を優先させたりという、メリハリを持たせることを重点的にやっていきたいなと思います」と冷静に話す。
それぞれのジャンプが単発の時は回転スピードも速く、軸も細いジャンプになっていることからも、状態のよさを感じさせる。それは本人も自覚しているという。
「ループはだいぶ安定してきていますね。やっとという感じですけど、試合や曲がかかった段階でのジャンプをすごく自信を持ってやれるようになっていますし、いい練習をしてこれたなと感じています。今日の練習では失敗もありましたが、そういう経験も本番へ向けて活きてくると思う。
 振り付けも少しずつ変えていますが、心に余裕が出てきたかなという感触もあってのことなので。後半のサルコウについても、ちょっとずつ余裕が出てきていますし、曲により入り込めるようになってきています」
 今回の世界選手権は、来年の平昌五輪の枠取りがかかっているプレッシャーもあるが、今は試合に向けてノビノビとやれている状態だという。「落ち着いて本番に向けた調整ができているし、氷や自分の体の可動域などを繊細に感じることができています」と、自信のある表情だ。
 28日の午後にプラクティスリンクで行なわれた公式練習では、曲かけの前から4回転ジャンプに何度もチャレンジ。SPの曲かけこそ、3回のジャンプはすべて失敗したが、曲かけの後もジャンプを跳ぶ位置を変えるなど工夫をし、4回転サルコウをきれいに跳べるまで繰り返す執念を見せ、本番へ向けての気持ちを徐々に高めていた。
 また、出場枠獲得のため共に戦う宇野昌磨も、午前の練習の曲かけでは最初の4回転ループで転倒したものの、その後の4回転フリップからはすべてのジャンプを成功させる集中力の高さを発揮。宇野は「以前は練習でできないものは絶対にできないと思っていましたが、今は集中すればできるという気持ちになっている。特にフリップはそうなので、そういう思い込みを利用しています」と笑顔を見せた。
 羽生は3大会ぶりの、宇野は初の世界選手権制覇に向け、ふたりとも自分らしい準備を積み重ねている。