2016.12.23 - elle japan - 羽生結弦選手が好きすぎるユーロスポーツの解説者にインタビューしてみたら

羽生結弦選手が好きすぎるユーロスポーツの解説者にインタビューしてみたら
elle 2016.12.23
http://m.elle.co.jp/culture/interview/eurosports_Simon_Reed_Chris_Howarth161223
Interview with Mr. Simon Reed and Mr. Chris Howarth (Commentator from Euro Sports) Interview & Text : Kiyoko Matsushita
羽生結弦選手が好きすぎる解説者としておなじみの「ユーロスポーツ」クリス・ハワースとサイモン・リード。全日本選手権不在の“ゆづロス”を埋めるべく、「エル・オンライン」がふたりに直撃インタビューを実施。称賛の嵐とともに、彼らのお気入り演技など過去の名シーンを振り返る。

クリス・ハワース Chris Howarth: 1960年12月25日生まれ。「ユーロスポーツ」解説者。元フィギュアスケーターでレークプラシッド五輪英国代表。現在コーチとしても活躍している。
サイモン・リード Simon Reed : ジャーナリスト/「ユーロスポーツ」コメンテーター。1960年代後半から「BBCラジオ」で記者として働き始め、1973年にテレビ進出。1995年から「ユーロスポーツ」のヘッド・コメンテーターに。テニスとフィギュアスケートの実況に定評がある。
「優雅で、とても強い選手」
Q1 : はじめに、羽生選手の一番すごいところを聞かせてください。
サイモン : そうだね、彼はすごく優雅で、とても強い選手だ。そして、優秀な競争相手であり、いつもコンペティションを楽しんでいるように見える。一番厳しい状況下でも常に自己ベストを出すところじゃないかな。
クリス : まさにサイモンの言う通りだよ。過去の実績をみれば分かるけど、彼は初めて大会でクワド(4回転)・ループに挑戦し、またオリンピックで金メダルをとった初の日本人男子選手。今ではグランプリを4連勝した。さらに300点以上のスコアをたたき出した初のスケーターだ。それらすべてが彼のキャラクターを語っているさ。
クリス : 間違いなく、いま最強の男子スケーターじゃないか。それにサイモンが言ったように、彼は極度のプレッシャーのなかでも常に実績を出している。大勢の観客が見守る中にアイスリンクに出るのは、言い現せないくらいのプレッシャーがあるんだ。プレッシャーがなくたって、アイスリンクでのパフォーマンスは難しいというのに。
クリス : 彼はグランプリ・ファイナルのリンク上でクワド・ループを見事に着地させた。途中で、鼻の先が地面につきそうになったけど、なんとか足で体をささえて乗り切った。それがゆづるだ! 彼のパフォーマンスを観るのはいつもゾクゾクするよ。すごく魅力的なキャラクターの持ち主だから、いつも楽しみながら観ているんだ!

Q2 : 羽生選手にしかないスキルや能力とは何でしょうか? サイモン : 氷上に立ったときの優雅さはほかの誰よりも勝っている。堂々としかも上品に立ち振る舞っている。でも彼が完璧じゃないということは今年のグランプリからもよく分かると思うけど。しかし毎回失敗するたびに、まるで何もなかったようにしてしまう。失敗したあとでさえ、彼はリンクの上で威厳あるように振る舞いつづける。彼の自信を感じるとることができるくらいさ。
クリス : そうだね。彼が持っている要素をすべて持ち合わせている選手はいないよ。観客を引きつける力、素晴らしいテクニカルな能力、そしてサイモンが言ったように、優雅さを兼ね揃えている。もちろん、常にそれらの要素が同時に発揮されるわけではない。しかし、彼がそれらを全て表現できた時はまるで魔法のようだよ!
クリス : そして、これだけはどうしても言っておきたいんだけど、ゆづるは自分のテクニカルなスキルの限界に挑み、他のスケート選手たちを引っ張っている。これからの何年間かはスケーターたちの失敗をもっと見ることになると思うけど、それは彼らが今までよりももっと難しいジャンプに挑戦しているから。それはゆづるが常に自分の限界にチャレンジしているからなんだ。すごく素晴らしいことさ!

Q3 : 羽生選手のパフォーマンスで一番好きなプログラムを教えてください。 サイモン : う~ん、ひとつには絞れなくて……2つある。1つ目は今年のショート・プログラムでジェフリー・バトルが振り付けした“プリンス・プログラム”。すごく好きだった!
サイモン : しかし、わたしが思うに彼の魅力が一番よく表れているのは(2014年の)中国杯のやつだよ。試合前の公式練習中にハンヤン(中国のエンカン)選手と衝突して大けがをしてしまった。
サイモン : 確か5回も転んだにもかかわらず、銀メダルを獲得。パフォーマンスを途中で止めなかったのは並大抵なことじゃないさ。あのときの彼は一見弱っているように見えたかもしれないけど、でも実はものすごい回復力があったんだ。そのコンビネーションがファンタスティック!!
クリス : 僕にとってはこれは難しい質問だな……。そうだな、僕も今年のグランプリ・ファイナルのショート・プログラムがすごく良いプログラムだったから、楽しくみさせてもらった。毎年、自分の不得意分野にも挑戦しているのが、彼のすごいところだよ。今年のプログラムは彼にとって特にチャレンジングだったと思うから、すごく印象に残ったよ!

Q4 : テクニカルなスキルや能力以外で、羽生選手のどんなところが好きですか? サイモン : 彼のデリケートでありながらも、強いフィギュア・スケーターであるところ。そのコンビネーションさ。
サイモン : 中国杯で見せたあの回復力のすごさ。それに2011年の震災のあとに、仙台のリンクで練習できなくて、リンクが再開するまで横浜まで練習に行っていた。その大変な経験のあとに勇気をもってカナダに行ったのは本当にすごいよ。(もちろんコーチのブライアンだってファンタスティックだけど)人生を完全に変えるとはね。
サイモン : まあ多くの選手が海外にいくけど、中でも羽生選手はいい成功例さ。あのときの彼はあと一歩ステップ・アップする必要があった。彼は見事にそれを成し遂げたんだ。
サイモン : いつだったか羽生選手は「自分には日本人の友だちが多くない」と言っていたけど、でもその友人らによると、日本の女子の間では羽生選手が一番人気であるようだ。もしかしたら、男子にはテニス選手の錦織圭のほうが人気かもしれないけど、でも女子には……もちろん男子にもファンはいるだろうけど……羽生選手のほうがダントツ人気らしい(笑)。
サイモン : サッカーのデビッド・ベッカムは日本で人気だったと思う。彼は過去20年間で一番人気だったスポーツ選手だったからね。でも、わたしの知る限り、ゆづるは当時のベッカムよりも人気らしい。
サイモン : 彼はその半端ないプレッシャーを感じながらも、アイスリンクの上では何も感じていないかのように振る舞っている。もちろん彼のルックスも人気に関係していると思うけどね。まあ、女子に聞いてみればはっきりするだろうね(笑)。
クリス : 羽生選手は素晴らしいカリスマ性を持っていると思う。彼がアイスの上に立つたびになぜかひき込まれてしまう。もう目が離れなくなってしまうんだ。これからエキサイティングなことが起きるって、予測出来てしまうのさ。そこが彼のマジカルな魅力だと思う。
クリス : サイモンも言っていたけど、多くのファンが見守るなか、あのプレッシャーと戦うのはすごい。そして何回もそれを乗り越えてみせている。
クリス : そんな見事なクオリティを持ち合わせている選手は他にいないよ。もちろん、彼はイケメンさ!(笑)