2013.12.20 - web sportiva - フィギュア全日本、注目はソチ五輪代表最後の「1枠」争い(折山淑美)

 

12月21日からの全日本選手権で最終章を迎えるフィギュアスケートのソチ五輪代表争い。男女それぞれで3枠あるシングルの選考方法は、全日本選手権出場 が最低条件で、ひとり目は全日本の優勝者。二人目は全日本2位および、3位の選手と、GPファイナル日本人表彰台最上位の選手から選出する。そして三人目 は前記で漏れた選手のうち、全日本選手権終了時の世界ランキングと、ISU公認大会でのシーズンベスト記録上位3位までの選手から選考する。

日本は国別最大の3枠があるとはいえ、選手層が厚いため、毎回代表の椅子争奪戦は激しくなる。今季も、それはGPシリーズ開幕戦から始まっていた。

  その中で大きく抜け出しているのが、羽生結弦(ゆづる)と浅田真央だ。二人はともにGPファイナルで優勝と選考条件のひとつをクリアしており、シーズンベ ストも羽生はファイナルの293・25点。浅田はNHK杯の207・59点で他の選手たちを大きく引き離している。また、ファイナル終了時の世界ランキン グも羽生は1位、浅田は2位で日本人最上位に立っており、ほぼ内定と言っていい状態だ。

 その二人に続く2番手となれば、男子はファイナル 3位の織田信成がいるが、彼は髙橋大輔がケガで欠場したために繰り上がりでの出場だった。その髙橋はNHK杯で優勝しているうえに、シーズンベストも 268・31点で羽生に次ぐ2番手。世界ランキングも現時点では3位と一歩リードしている。

 また女子は、他の選手がGPシリーズで表彰台 に上がれなかったのに対し、鈴木明子がスケートカナダ2位、NHK杯3位と安定した成績を残している。さらにシーズンベストは浅田に次ぐ193・75点 で、世界ランキングも日本人2番手の4位。髙橋と同じように代表有力候補と言っていい。

 

羽生、髙橋、浅田、鈴木の4選手は、これまでの実績からみても、体調さえ合わせてくれば全日本選手権で表彰台に上がる確率は高い。そうなると男女ともに3 枠目の争いが熾烈になる。男子はGPファイナルに出場した町田樹(たつき)と織田信成に加え、小塚崇彦と無良崇人、女子は村上佳菜子と宮原知子、今井遥、 安藤美姫がその席を争うことになるだろう。

男子では、町田が世界ランキング、ベストスコアともに3番手で選考対象者になる条件を満たしており、女子は村上が世界ランキング11位で日本人3番 手、宮原が170・21点のシーズンベスト3番手で選考対象となる。ただ、それ以外の選手との間に、絶対的と言えるほどの差は存在しておらず、全日本で3 位以内に入った選手が代表となる可能性が高いだろう。

 そんな視点で今回のソチ五輪出場権の争いを考えると、男子でしぶとさを見せそうなの が、GPシリーズでファイナルまでの3戦で3位、2位、3位と表彰台を外していない織田だろう。GPシリーズでは4回転トーループが完璧にこなせず、得点 をもうひとつ伸ばせなかったが、ファイナルのフリーでは最初の4回転で転倒しながら、その後の4回転トーループ+3回転トーループを決める粘り強さを見せ た。

 一方の町田は、スケートアメリカではショートプログラム(SP)、フリーで3度の4回転トーループを跳び、2回は成功。フリーで跳ん だ2回目の4回転で手を突くミスをしただけで、ほぼ完璧だった。その後、ファイナルでは、SPで4回転に失敗して最下位の6位スタートになったが、フリー では4回転をきれいに決めて総合で4位と、気持ちの強さを見せた。

 安定感では織田に一日の長があるといえるが、今季の町田の急成長ぶりは目を見張るものがあり、4回転を完璧に決められれば、表現力も評価され始めているだけに総合力で上回ることも可能だろう。

  GPシリーズで出遅れた小塚は、故障もあって体調が万全ではないが、元々持っているスケーティング技術は高く評価されている選手。また、シーズンイン後に プログラムを変更した無良も、硬さが取れてジャンプを完璧に決めれば、昨年の全日本で3位に食い込んだことからもわかるように、底力を持っている選手だ。 彼ら二人は、ともに挑戦者として強い気持ちで臨んでくるはずで、上位争いは僅差の戦いになるだろう。その意味でも、フリーへの勢いをつけることになるSP の出来に注目したい。

 

女子の3枠目争いは、本来の実力が発揮できれば、村上が一歩リードしていてもいいはずだが、今季は五輪シーズンを意識し過ぎてか調子を上げられない でいる。彼女は今季SPが不調で、中国杯では4位と出遅れて合計でも4位。次のロシア杯ではジャンプが大きく崩れてしまい、9位発進でフリーは4位、総合 7位と不本意な結果に終わった。

 また、昨年の全日本で180点台に乗せて3位に食い込んだ宮原も、シニア初挑戦のGPシリーズではNHK 杯の170・21点が最高と高い評価はもらえないでいる。もうひとりの若手である今井も、GPシリーズではジャンプの不調が原因で最高得点が150・30 点と伸び悩んだ。

 一方、出産後の復帰となった安藤は、東日本選手権後にイタリアでじっくり練習を積んでから急激にスピードを取り戻し、 12月にクロアチアのザグレブで行なわれたゴールデンスピンでは、キム・ヨナ(韓国)に次ぐ2位となり、176・82点を出すまでに調子を取り戻してきて いる。3位争いが180点台前半から170点台になってくると、安藤が3位以内に入る可能性は十分あるだろう。

 全日本の上位争いは、男女ともに混沌とした状況。ソチ五輪代表の座をかけた戦いから目が離せない。

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