2017.04.05 - sanspo - 【五輪を語る 産経新聞特別記者・佐野慎輔】 羽生ら選手が集中できる環境を整えてほしい

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 これを「完璧」というのだろう。テレビで流されたフィギュアスケートの世界選手権、羽生結弦のフリーの演技に、瞬きもせずに見入ってしまった。
 「演技内容を忘れるくらい集中してやれた」
 羽生自身が語る世界歴代最高得点。来年2月の平昌五輪への期待が否が応でも高まっていく。
 今年2月、米国の分析会社は平昌のフィギュアスケート男子の金メダルをスペインのハビエル・フェルナンデスと予想、羽生は銀メダルとした。前2シーズンの世界選手権での成績が要因だろうが、3シーズンぶりの羽生優勝で順番が入れ替わるかもしれない。
 予想はあくまでも、ある段階での憶測にすぎない。本番では何が起こるかわからない。勝負の世界、とりわけ一発勝負が基本の競技では予期しない事態も起こりうる。だからこそ選手たちは、最高の状態に近づけるための準備を怠らないのだ。
 開催運営の準備も当然である。いや、運営は万が一の事態にも支障があってはならない。完璧な備えが求められる。
 先週、韓国の朴槿恵前大統領が逮捕された。国民感情が「法治」に優先されるお国柄、逮捕はありうるとは思っていたが、いざ現実となると、やはり衝撃である。
 野党陣営が勢いづくなか、黄教安大統領代行兼首相率いる暫定政権に事態を収拾する力はない。5月9日に予定される大統領選挙に向け、混乱はまだ続く。有力視される「親北反日」政権は混迷に手を打てるのか。
 もとより、五輪と政治とは分けて考えなければならない。しかし、開幕までに政治の助けを必要とすることは数多い。交通網整備に始まりテロ対策や治安維持、支障がでている財政面のバックアップも必要だ。
 施設はほぼ完成した。一方、高速道路建設は遅れ、宿泊施設の不足が指摘されて久しい。そこに外交、安全保障の不安が加われば、選手や観客にも影響がでよう。
 昨年のリオデジャネイロ五輪も大統領が直前に弾劾されるなど、政治・経済に治安面の不安が指摘された。しかし、大会は成功裏に終えている。
 案ずるより、産むが易し。とはいえ、昨年から続く混乱は完璧な準備を阻害し、国民の関心も低い。対応が急がれる。
 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長はじれている。五輪憲章に反し、今年9月に予定される2024年大会の開催都市決定時に28年大会も同時に決めようと画策したとされる。14年ソチ、リオ、そして平昌と会長就任後の五輪では問題が噴出、相次ぐ立候補辞退を招いた。もうこれ以上、混乱を拡散させたくない。
 完璧は望むべくもないが、韓国には羽生ら選手たちが競技に集中できる環境を整えてもらいたい。